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スタバ、「カード払いのみ」の実験店舗、「Amazon Go」…… 加速するキャッシュレス化

スターバックスがシアトルの高級オフィス街店舗で、「カード払いのみ」のキャッシュレス決済を実験中だ。「キャッシュレス決済が顧客経験におよぼす影響」を探ることが実験の意図だというが、店内の注文から現金を排除することで、大幅な時間と労力、店内の混雑を解消することが狙いかと推測される。

米国では無人コンビニ「Amazon Go」も消費者に開放されたが、キャッシュレス化が加速する一方で、銀行口座をもたない人々やデジタル化になじめない高齢者が取り残されるとの懸念も指摘されている。

オフィス街店舗ではすでにキャッシュレス化進む?

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(写真=Thinkstock/Getty Images)

 

シアトルタイムズ紙の2018年1月17日付の報道によると、スターバックスはワシントン州 シアトルの超高層ビル、ラッセル・インベストメンツ・センター内の店舗 で、2018年1月16日からキャッシュレス実験を行っている。

スターバックスの広報部はこの実験の目的を、「キャッシュレス決済が顧客経験におよぼす影響の探求」としており、実験期間やほかの店舗での実施予定については明らかにしていない。

ワシントン大学 マイケル G. フォスター・スクール・オブ・ビジネスのジョナサン・チャン教授は、今回の実験が売上にあたえる影響は少ないと見ている。ラッセル・インベストメンツ・センター内の店舗はオフィスで働く客が多いため、「元から現金よりもカード決済の方が多かっただろう」とシアトルタイムズ紙に語っている。

モバイル注文増加が裏目にでて売上低迷 店舗内でも効率化図る

今回の動きは、「昨年の売上成長鈍化の原因がモバイル注文の増加にある」という同社の判断に基づいたものではないかと思われる。同社の昨年11月に発表した第4四半期の売上はアジア事業拡大の期待に反し、アナリストの予想を1.2ポイント下回る2%(前年同期比2ポイント減)。発表後、株価は7.5%安の50.75ドルまで落ち込んだ(ブルームバーグ国際版2017年11月2日付記事 )。

低迷の原因として北米でのカフェ市場が飽和傾向にあるほか、アプリ注文増加とともに商品を受け取りにきた客で店内が混雑し、直接店舗に訪れた客がなにも買わずに立ち去ってしまうケースが増えている―と、同社は認めている。モバイルアプリで注文と決済を先にすませて混雑を解消する意図が、注文が急激に増えたことで逆に店内が混み合う結果になってしまった。

対応策としてアプリ注文を制限することも可能だろうが、結果としてさらに売上が低迷する可能性も考えられる。残る手段は店舗内の注文にもキャッシュレス決済を導入し、接客の回転率を上げるしかない。

チャン教授はスターバックスが、その辺りを「ちゃんと計算している」と指摘している。キャッシュレス決済でひとつの注文につき10秒節約できると仮定すると、500件の注文で5000秒(1時間23分20秒)、1000件の注文で1万秒(2時間46分40秒)だ。1週間、1カ月、1年単位で考えると、莫大な時間の節約につながる。

またキャッシュレス決済ならばレジに現金を置いておく必要もなく、両替や預け入れで銀行に走る手間も省ける。食べ物や飲み物を取りあつかう店ゆえに、衛生面での心配も軽減される。

究極のキャッシュレス店舗「Amazon Go」テスト終え営業開始 

スターバックスより精力的にキャッシュレス化を進めているのはAmazonだ。2016年、シアトルの本社内に第1号店をオープンさせた無人店舗「Amazon Go」が約14カ月のテスト期間を終え、ついに誰でも利用できるようになった。

無人店舗というものの、棚の補充や客の応対をする従業員は店内にいるそうなので、「決済レス・キャッシュレス店舗」という方が正確だろう。

Amazonは無人店舗をむやみやたらに増やすのではなく、あくまで効率のよいオフィス街で展開する意向を示している。Amazonの事業は元々オンライン決済=キャッシュレスをベースとしているため、センサーを導入することで実際の店舗に同様のキャッシュレス決済を持ちこんだといえる。

シンガポール、カナダなどではカード決済が6割以上

キャッシュレス化は世界でどの程度進んでいるのだろう。

ロンドンを拠点とする市場調査企業ユーロモニター・インターナショナルの調査によると、2016年、キャッシュレス決済の割合が現金決済の割合を初めて上回った。シンガポール、カナダ、オランダ、フランス、スウェーデンなど、優れたテクノロジー促進環境と経済力を誇る国では、キャッシュレス決済が全体の6割を超えたという。

一方ドイツでは2017年の時点でも現金決済が半分以上(53%)を占めていることから、かならずしもキャッシュレス化と国の経済力・テクノロジー促進環境が比例するわけではないことが分かる。ドイツが高齢化社会であることなどが現金決済の根強さの理由として挙げられているが(オプタイル2017年7月3日付記事 )、そう仮定すると日本にも同じ決済傾向が該当するのだろう。

キャッシュレス化で高齢者や銀行口座を所有しない人々が疎外される?

しかし小売店、しいては社会のキャッシュレス化への移行が、「銀行口座やカードを所有しない人々」を疎外することになるのではないかとの懸念もあがっている。

世界銀行が2011~14年にかけて世界140カ国・地域以上の金融包括データを集めた「グローバル・フィンデックス」 によると、銀行口座を所有していない人口は20%減ったものの、新興国を中心に20億もの人々が銀行に口座をもたずに生活している。

これらの人々は基本的に給与や政府から支給される福祉金を現金で受けとり、受け取った現金で支払い行っているが、通常の銀行口座が不要なモバイルバンクなどの普及も広がりつつある。

特にサブサハラアフリカ(サハラ砂漠より南の地域)では、6400万人のうち12%がモバイルバンクを利用しており、45%がモバイルバンクの口座を開設している 。

銀行口座を所有しない人々やデジタル化になじめない高齢者など、あらゆる層の金融包括を意識したシステムがキャッシュレス社会に組み込まれれば、一部の人々が疎外される懸念も薄れるものかと思われる。キャッシュレス化を加速させる側が取り組むべき、重要な課題である。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)