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ICOの明暗を分ける各国政府の動き 国家にとって「利益」か「損失」か?

仮想通貨市場を揺るがした中国におけるICO(Initial Coin Offering)禁止以降、世界各国でICO規制強化への動きが強まっている。

しかし、その方向性は大きく2つに分岐しており、中国、韓国、米国などがICOや仮想通貨取引を厳しく規制する方針を打ち出す一方、スイス、カナダ、ロシアなどは促進の動きを強めている。中国ICO禁止の影響による、各国の動きを追う。

「ICO禁止」世界一厳格な規制手段に出た中国

(写真=Who is Danny /Shutterstock.com)

中国政府は2017年9月、「全ICO禁止措置」および「仮想通貨取引所閉鎖」という世界で最も厳格な規制を設けた。この決定を受け、同国最古のビットコイン取引所BTCCを含む仮想通貨取引所が、次々と仮想通貨の取引停止を余儀なくされた。

同国の国営通信社、新華社通信が2017年9月22日に報じたところでは、90%のトークン払い戻しが完了しているとともに、国内のICOおよび仮想通貨取引所の閉鎖に向け、政府が圧力を加えているという。払い戻しの金額については明らかにされていないが、ブルームバーグや新華社通信の報道から推測すると、1月~8月にかけて、中国では65件を超えるICOで総額11億ドル以上が動いたということから、相当の金額が返金されているはずだ。

中国人民銀行や中国銀行業監督管理委員会は、一部のICOを「金融詐欺、ネズミ講」と見なし、強硬手段に出ることで、「経済および金融の秩序を乱す活動」を規制する意向を公告している。これには当然、仮想通貨の流通自体が含まれる。

中国は長年にわたり、仮想通貨が自国の経済にもたらすネガティブな潜在的影響に対し、懸念を示してきた。実は2013年12月にも仮想通貨取引を禁じ、規制強化を図っているのだ。改めて、中国のそうしたスタンスが明らかになったものといえる。

ICOに強い警戒心を示す米国、シンガポール、韓国

海のものとも山のものとも判別のつかない仮想通貨を、以前から持て余し気味だった韓国やシンガポール、米国などは、中国の決断を機に一斉に規制強化の方向に傾いた。

米国証券取引委員会(SEC)は「現行の規制枠の中で監視する」との見解だったが、2016年の時点で、ハッキングにより360万イーサ(当時の価格で5,000万ドル相当)を流出させた The DAOの調査を進めるのと並行し、ICOや仮想通貨の位置付けを模索していたと思われる。

2017年7月には一部のICOトークンが証券規制の対象になり得ると判断し、自国の取引所の登録を義務化すると同時に、業務活動を管轄下に置く意向と発表した。そして中国の動きが市場を揺るがしたあと、ICOを用いて詐欺行為をしたとされるニューヨーク在住の男性1人と2社の起訴に踏みきるなど、必要があれば法的効力の行使に出る構えを示している。

中国に続いてICOを禁止した韓国は「見直しの余地あり」?

興味深い動きが見られるのは韓国だ。中国に続いてICOを禁止した国として引き合いに出されることが多いが、相次ぐICO関連のトラブル回避策として禁止命令を出したものの、見直しの余地を残しているという点で中国とは全く異なるスタンスが感じられる。

大韓民国金融委員会(FSC)は9月、ICOバブルや詐欺被害の懸念を理由に、ICOを含む「あらゆる形態のブロックチェーン関連の資金調達」を全面禁止にする意向を発表した。また「仮想通貨の信用取引」の禁止を検討中であることも、明らかにしている。

こうした強硬な手段に出る一方で、「今回の措置は仮想通貨を制度化する意図ではなく、仮想通貨関連企業の運営を調査し、不公平な規約や条件を改正する」ための動きであると述べている。楽観的に見ると、今後の規制の見直しによってICOや仮想通貨取引の安全性が著しく向上したと判断された場合、将来的には禁止措置が撤回される可能性もある。

ICOを積極的に容認するスイス、カナダ

上記の各国とは対照的に、カナダやスイスなどではICO促進の動きが強まっている。中国が禁止に乗り出した9月、カナダでは国内初の政府認可ICOが誕生した。ケベック州の金融機関規制当局AMFが、スタートアップImpak CoinのICOの安全性を承認したのだ。

また、同国のブリティッシュ・コロンビア州証券委員会(BCSC)も同月、First Block Capital Inc.を国内初の仮想通貨投資ファンド・マネージャーとして承認した。

こうした動きからは、スイスとの共通点が汲み取れる。スイスは、早くから仮想通貨の普及に熱心だった自治体ツーク(Zug)や、7月のICOで2.3億ドルという巨額の資金を調達したTezosの拠点であることでも有名だ。「仮想通貨の谷」の異名を持つツークで設立されたCrypto Valley Association(CVA)は、政府が支援するブロックチェーンおよび仮想通貨促進協会で正式な規制ガイダンスを9月に発表した。

CVAはガイダンスの中で、「ブロックチェーン市場におけるイノベーションを支援する」姿勢を前面に押し出すと同時に、ICO関連の規制を明確にし、さらにICOを行う企業側が「法的および道徳的な義務を履行し、投資家からリスクに対する理解を得る」ことで、より大きな恩恵を生み出すことができるとの確信を示した。

日本、台湾、香港はICOに対して中立的?

日本では金融庁が9月末、仮想通貨と法定通貨の交換業者を仮想通貨交換業として登録したのに続き、10月に「仕組みによっては、資金決済法や金融商品取引法等の規制対象となる」と発表した。

これにより、サービスが資金決済法や金融商品取引法等の規制対象となる場合、内閣総理大臣(各財務局)への登録が必要になった。禁止を視野に入れた圧力は一切感じられないが、一部の活動を監視下に置くとともに、投資家にICOに潜むリスクへの警戒を呼びかけている。

台湾では10月に入り、「金融監督管理委員会が、仮想通貨やブロックチェーン技術について受け入れていく意思を表明した」と、ニュースサイト「The News Lens」が報じた。報道によると、フィンテックの促進に積極的な台湾の国民党議員のジェイソン・シュー氏は、「仮想通貨を証券のように厳格な管理および監視下に置く、日本のアプローチを模範にすべき」とし、「中国や韓国のICO禁止を追う予定はない」とコメントしているという。

香港の証券先物取引監察委員会(SFC)も同様、9月5日時点では具体的な規制には乗り出していないものの、「ICOトークンが有価証券に分類される可能性がある」とし、規制の強化を検討中だ。

仮想通貨、ICOに拒絶反応を示す欧州委員会

欧州では見解が真っ二つに割れているようだ。国際法律事務所(CMS)が8月30日に公表した情報によると、ドイツを含む欧州圏ではICOに対する規制フレームワークは設けられていない。ところが他国同様、巨額の資金流動を黙視するほど楽観視してはおらず、規制の制定に向けて準備中だという。

英国の金融行為規制機構(FCA)も、投資家へのリスクに警戒を発しているものの、比較的緩やかなスタンスを示している。フランスの金融市場庁(AMF)はICOを「法的根拠がない」と見なす一方で、仮想通貨を「迅速でコスト効率に優れた資金移転方法」であることを認めている。さらに11月には、同国の資産運用会社TOBAMによる、欧州初のビットコイン・ミューチュアル・ファンドを承認している。

しかし欧州圏の政策執行機関である欧州委員会は、ブロックチェーン技術への関心は強く示しているものの、ICOだけではなく仮想通貨全般に良い心証は抱いていないようだ。

欧州委員会は過去数年にわたり、テロリストのマネーロンダリング対策を強化しており、2016年に仮想通貨を含むデジタルマネーを規制強化対象として追加した。2017年9月には仮想通貨犯罪の罰則強化を決定している。そして、自国の経済成長に向け、世界初の国家によるICOを検討中のエストニアに対しては、「EU圏内での独自の通貨の発行は一切認めない」と、真っ向から圧力をかける構えでいる。

「ICOはスタートアップにとってのチャンス」ロシアの変貌

ロシアは今一つつかみどころがない。一時は仮想通貨の流通に懲役刑を与える法案まで飛び出していたにもかかわらず、ブロックチェーン技術や仮想通貨への関心を急激に高めている。さらに11月には中央銀行のセルゲイ・シヴェツォフ第一副総裁が「ICOはスタートアップに資金を調達するチャンスを与える」と発言するなど、自国の経済発展に大きく貢献する可能性として、規制環境の整備とともに促進を検討している意向をほのめかした。

しかし、これ程までの極端な変貌を目の当たりにすると「仮想通貨やICOに友好な姿勢が続く保証はどこにもない。いつ、何がきっかけで、方針がコロリと変わっても不思議ではない」と考えずにはいられない。

各国・地域のICO規制に対するスタンスの差はそれぞれ異なるものの、いずれの政府も手探り状態である点は共通している。ICOはもちろん、仮想通貨の普及が長期的に自国の経済や社会に与える影響は、まだ誰にも予測できない。

未知のものに対する恐れが優るか、期待が優るか————そうした葛藤が、潜在的な仮想通貨の可能性を早期に摘み取るか、あるいは注意深く監視しながら成長を見守っていくのかというスタンスの違いに表れている。今後も各国の動きに注目する必要があるだろう。(提供:MUFG Innovation Hub

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