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課税・非課税は定義次第?「仮想通貨と海外の課税ルールについて」

ビットコインに代表される仮想通貨の課税ルールは、各国・地域における定義付けによって異なる。EUなどでは仮想通貨を「通貨の一種」と見なし、米国や日本、オーストラリアでは「資産」と定義付けている。仮想通貨がネット限定で流通する通貨――つまりデジタル・データであると考えると、貨幣や紙幣と同類と見なすことは不自然となる。

しかし、本来の性質は異なるとはいえ、ネット上では通常の現金や電子マネーと同様、決済手段として商品やサービスの購入に利用できる。その点では「現金と同等の価値」があるはずだが、為替レートの変動によって仮想通貨の価値も変動するという点を考慮すると、課税対象になる資産と見なすこともできる。こうした複雑な要因が絡み合い、各国・地域における仮想通貨の定義の統一は困難となっている。

日本では2017年から所得税の課税対象に

(写真=Africa Studio/Shutterstock.com)

日本では2017年4月の改正資金決済法施行に伴い、ビットコインの定義が「財産的価値はあるが、法定通貨ではない資産」と明確化された。通貨建資産である電子マネー、あるいは外貨などとは別物ということになる。同年7月に仮想通貨の売買取引が消費税の非課税対象となり、9月に国税庁が「ビットコインの使用によって生じた利益を所得税の課税対象と見なし、雑所得に分類する」と発表した 。

日本では、個人で得た利益は総合課税の対象となり、法人として得た利益は法人税の課税対象となる。株式などの売却益では税率が一定だが、累進課税が適用される所得税では所得が高くなるほど課税額も高くなる。累進課税とは、前述のとおり課税対象額が大きくなるほど税率が高くなる仕組みで、日本では所得税のほか、相続税・贈与税などに適用されている。

課税所得は給与所得、配当所得、譲渡所得など10種類に区分されるが、そのうち雑所得とは、いずれにも該当しない所得をさす。「仮想通貨で得た利益」「仮想通貨で購入した商品」「仮想通貨で得た事業所得」は雑所得の一つと見なされ、そのすべてが課税対象になる。

雑所得という分類で注意すべきは、雑所得は翌年に繰り越し不可能という点だろう。相殺したい場合などは、あくまで雑所得に分類される所得で相殺する必要がある。つまり、仮想通貨取引で損失が出たとしても、翌年以降にその赤字分を繰り越すことは認められていない。

たとえば、2016年に50万円の赤字、2017年に300万円の利益を出したとする。損失の繰り越しが認められている場合、2017年の利益から2016年の赤字を差し引き、課税対象を250万とすることが可能だが、仮想通貨=雑所得ではそうした繰り越しができず、300万円がそっくりそのまま課税対象となるのだ。

仮想通貨の定義や課税ルール、取り扱い業者の規制に関しては、他国よりも出遅れた感の強かった日本だが、いわゆる仮想通貨法の成立により、仮想通貨を安全に普及させるための環境が整いつつあるといえるだろう。仮想通貨取引業者に関する規制も同時に設けられ、内閣総理大臣の承認を受けていない仮想通貨取引業者の事業運営は違法となった(資金決済法63条の2)。業者の基準を一定に保つことで、悪質な運営を取り締まる意図だ。

米国でも仮想通貨による資産取引は課税の対象

米国では2014年と、比較的早期に仮想通貨を資産と見なし、仮想通貨を利用した資産取引に対して課税する方針を内国歳入庁(IRS)が示している。このあたりは日本の定義と類似する。

具体的な例を交えて説明すると、たとえば1,000ドルで購入したビットコインの価格が2,500ドルに高騰し、その2,500ドルでPCを購入したとする。するとここでの利益は1,500ドル分の売却益とみなされ税金が課される。さらにPCの販売者には2,500ドルの収入に対する税金が課されるというわけだ。

給与の支払いに仮想通貨を利用する企業も徐々に増えているが、ここでも給与は課税対象となるため、雇用側はForm W-2(源泉微収票)の提出が義務付けられている。

同じEU圏内でも課税ルールは異なる

ECBによる仮想通貨課税要求をめぐり、裁判沙汰にまで発展した欧州ではどうだろうか。

EU圏ではビットコイン取引を禁じているアイスランドなど一部の国を除き、仮想通貨の取引は自由だ。2015年には欧州司法裁判所(ECJ)が、「ビットコインの売買に関しては付加価値税(VAT)対象外」との判決を下している。仮想通貨を付加価値税法14条で定める硬貨や紙幣と同等の支払い手段とみなし、ビットコイン取引が同135条1項に該当するVAT適用外であると結論づけた。

しかし、それでもなお、EU圏内での課税スタンスは統一されていない。英国歳入税関庁(HMRC)は2014年に、仮想通貨と課税ルールに関する大まかなガイダンスを発表しているが、EU圏の中では課税に消極的という印象が強い。

HMRCの定めた課税ルールによると、仮想通貨による金融取引(為替取引を含む)は付加価値税(VAT)対象外となるが、仮想通貨を利用した商品やサービスの取引で生じた利益は課税対象となる。「為替変動で生じた仮想通貨の利益・損失は、法人税の課税ルールが適用されるとしている」と定めているものの、原則として法人税、非法人税、キャピタルゲイン課税と仮想通貨の規制関係については、ケース・バイ・ケースで免除・課税が決定する。全体的に漠然としたルールは、2017年現在も改正されていない。

対照的にドイツやスウェーデンは非常に積極的な課税環境を整備している。ビットコインを外貨でも電子貨幣でもない「プライベート貨幣」、つまり金融商品として合法化しているドイツでは、2013年にドイツ連邦財務省が課税対象とする意向を発表した。25%のキャピタルゲイン課税の対象と定めているが、課税対象期間は仮想通貨入手後最初の1年間に生じた利益のみで、利益がそれ以降に生じた場合は非課税扱いとなる。

ビットコインの課税に厳しいシンガポール、ロシアは課税・監視を検討中

オーストラリア財務省は2017年の新国家予算で、ビットコイン購入に対する一般消費税を廃止することで、それまで同国内で問題視されていた「二重課税」に終止符を打った。これは仮想通貨購入時、そして仮想通貨による商品・サービスの購入時と2度にわたり、一般消費税が適用されていたというものだ。政府はビットコインを含むイノベーションを促進する意図で、仮想通貨関連企業に優しいビジネス環境作りを目指しているという。

世界に先駆け、2014年にビットコイン取引業者を規制対象(身元確認、犯罪行為の報告の義務化など)としたシンガポールでは、仮想通貨を「商品」と定義している。そのためビジネス目的の取引による利益、採掘による利益、さらに仮想通貨を利用した輸入や商品売買にも課税を義務付けている。

現在、課税を検討中の国・地域も少なくはない。ロシア連邦税関局は2016年に仮想通貨を「外貨」と定義付けたが、最近になって中央銀行副議長が仮想通貨を「デジタル・コモディティ」として規制する方向性について公にしたと報じられている。ロシアは課税も含め、仮想通貨取引を監視する意向を明らかにしているが、膨大な量の取引を監視する手段については具体化されていない。

ほかにはインドでの課税検討、イスラエル国税局による課税案発表など、ビットコインの普及に伴い各国・地域の政府機関が動き出している。ビットコインに代表される仮想通貨の課税ルールは、すでに一定の規制フレームワークが構築された国・地域でも、今後、改正が重ねられていく可能性は高いだろう。(提供:MUFG Innovation Hub

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