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GE(ゼネラル・エレクトリック)が目指す価値あるオープン・イノベーション—R&DからクラウドHRまで—

GE(ゼネラル・エレクトリック)の国際調査部門、GEグローバル・リサーチが主催するオープン・イノベーションは、政府から企業、教育機関、顧客まで幅広い提携関係のもと、「開発・改革・影響」をキーワードとして本当に価値がある創造を目指している。

外部からの技術や知識を積極的に取り入れながらも、組織内での人材の育成、HR(ヒューマン・リソース)、R&D(研究開発)分野の対応能力も着実に拡大させている。

GEの輸送や医療、再生可能エネルギーなど多様な領域にわたるイノベーションへの挑戦や、「クラウドソーシング・ウィーク・サミット(CSW)」への参加など最新の取り組みを紹介するとともに、同社が目指すオープン・イノベーションの展望を見てみよう。

第4次産業革命とオープン・イノベーション

(写真=Sergey Nivens/Shutterstock.com)

近年、「オープン・イノベーション」という言葉を頻繁に耳にするが、これは本来、企業や地方自治体、教育機関など複数の異なる分野から、知識・技術・発想・経験を含むさまざまな要素を融合させ、革命的な商品・サービス・戦略の開発や行政・組織・地域の改革等につなげる意図を持った活動をさす。

「R&Dや改革はあくまで組織内部で行う」という既存の概念を取り払い、外部との提携を積極的かつ効果的に進めることで、成長の可能性を無限に広げるという発想だ。ITの発展により第4次産業革命を迎えた今、多数の企業が「オープン・イノベーション」をキーワードに、新たな挑戦と改革に取り組んでいる。

しかし、オープン・イノベーションという言葉だけが先走りし、せっかくの機会を十分に活かしきれていない例も少なくない。短期的な利益創出を目的に、ただやみくもに外部からの力に依存するだけでは、真のイノベーションは生まれないだろう。

オープン・イノベーションの第一人者

GEはそんなオープン・イノベーションの草分け的存在だ。「世界が求めているものを探し出し、それを現実化する」というGEの共同設立者、トーマス・エジソン博士の言葉をイノベーション・モデルに、蒸気タービンから医療用X線 、ジェットエンジン、ハイブリッド機関車、光ファイバーまで、数えきれないほどの発明・開発・製造で歴史を塗り替えてきた。

GEは2009年という非常に早い段階で「オープン・イノベーション」というレポートを発表し、「世界のR&Dの多くが社外で行われている点」を指摘した。そして自社のR&Dが地元の提携関係を重視している点をアピールするなど、イノベーションに対して開放的で柔軟な姿勢を示した。

現在GEは、「イノベーションとはコラボレーションである」というスローガンを掲げ、事業規模を問わず300を超える企業やスタートアップ、教育機関、研究機関、政府機関などと協力し、オープン・イノベーションを加速させている。

クラウドソーシング・プラットフォーム開発から、次世代風力タービン翼開発まで

米国、インド、中国、ドイツ、ブラジル、イスラエルなどの世界9都市に設立したGEグローバル・リサーチ・ネットワークでは、こうした幅広い外部との提携関係を通し、輸送から医療、再生可能エネルギーまで、多様な領域で革命的な挑戦を進めている。

一例として、マサチューセッツ工科大学(MIT)と米国防高等研究計画局(DARPA)と提携して手掛けたプロジェクト「vehicleforge.mil」がある。これは専門家による国際コミュニティーが、軍用車両や航空システム、高度な医療機器といった複雑なシステムを設計・製造しやすくするためのクラウドソーシング・プラットフォームの開発だ。

通常、新たな軍用車両の開発には数十年の期間を要する。「設計から製造までのサイクルを2~4年に短縮したい」というDARPAの需要から、クラウドソーシングを採用し、産業用インターネットの構築と製造を加速することで劇的なタイムラインの縮小を狙った。

また、バージニア工科大学や米国立再生可能エネルギー研究所とともに、アーキテクチュアル・ファブリックによる風力タービン翼の開発にも挑戦している。アーキテクチュアル・ファブリックとは建築用の織物資材で、従来のコンクリートや鉄筋などの資材よりも、コストやエネルギー面などで優れているという。再生可能エネルギー産業の常識を大きく変えうる、革命的なプロジェクトだ。

さらに、米国退役軍人省(VA)とのプロジェクトでは、ロボットを利用し、病院における手術器具の消毒プロセスの向上を図っている。人間によるエラーを減らし、安全かつコスト効果の高いシステムを構築することが目的である。

GEのシニア・リーダーを生み出した「リーダーシップ・プログラム」

GEは外部との提携関係だけに依存することなく、組織内での人材育成にも力を入れている。科学者や技術者による個別の開発プロジェクトの支援はもちろん、大学院生を対象としたフェローシップ(特別研究員)制度や、技術者の育成を目的とする「エジソン・エンジニアリング開発プログラム(EEDP)」「大学院エンジニアリング・トレーニング・プログラム(GETP)」「デジタル・テクノロジー・リーダーシップ・プログラム(DTLP)」など、数々の「リーダーシップ・プログラム」も提供している。

育成は技術分野に留まらず、ファイナンシャル・マネージメントやHR、オペレーションまで広範囲に及ぶ。組織を成長させる上で支柱となる領域を総合的にカバーしている姿勢から、真のオープン・イノベーションを目指す心意気が感じられる。実際、GEのシニア・リーダーの3分の1が「リーダーシップ・プログラム」の元受講生だ。GEがこのプログラムに、年間10億ドルを投じているというのも納得の実績である。

「クラウドソーシング・ウィーク・サミット」への参加

GEは、人材育成とともに、クラウドHR(ヒューマン・リソース)分野にも積極的だ。世界中から最も優秀な人材を集め、各組織の最大の課題にソリューションを提供することを目指し、オープン・イノベーション・イニシアティブ「GENIUSLINK 」を立ち上げている。

最近では2017年6月15日、ワシントンで行われた「クラウドソーシング・ウィーク・サミット(CSW)」に参加し、クラウドソーシングの知識・経験を外部に提供すると同時に、新たな可能性を発見する機会とした。

このサミットは「クラウド経済のセカンドウェーブ」に焦点をあてたもので、AI(人工知能)、HI(人間の知能)、ブロックチェーン、ゲーミフィケーション(参加者のモチベーションやロイヤルティーを高める意図でサービスなどにゲームの要素を盛り込む手法)分野をリードする専門家が世界中から集結した。

参加者は、GEを含めたこれらの専門家から、クラウドソーシングを効果的に組織再編に役立てるための知識や経験を学び、クラウド・イノベーションやブロックチェーンから期待できる新たな経済効果を知ることができる貴重な機会となった。

GEが考える「価値あるオープン・イノベーション」

サミットでスピーチを行ったGENIUSLINK 責任者兼GE Open Innovation & Advanced Manufacturing部門社長、ディラン・フィンクハウセン氏からは、専門家としての興味深い見解があったが、その中でオープン・イノベーションの核心を突く発言もあった。

なぜ、需要に見合った技術者や研究者を雇用するだけでは不十分なのか。募集をかけ、集まった応募者の中から候補を選ぶという従来の手法の何が間違いなのだろうか————価値あるイノベーションには優秀な人材やR&D能力の確保は欠かせない。フィンクハウセン氏は、組織内部には「世界中で優秀な人材を探し、集めている時間はない」とし、「GENIUSLINKのようなソリューションを活用することで、効率的かつ効果的に理想の人材を確保することができる」と述べている。

しかし、こうした新たなプロセスを採用する一方で、「古い手法と新しい手法のバランスはとれている」という。フィンクハウセン氏はGENIUSLINKでの取り組みを通してクラウドソーシングを例にあげているが、同じことが外部との提携関係やR&D組織内での人材育成にも該当するはずだ。

ビジネスが抱える問題を解決するための最良で最短のソリューションを探し出す————オープン・イノベーション本来の概念であるにもかかわらず、外部との提携や新鮮な発想にばかり目がいって、意外と、この本質は軽視されがちだ。だがその点こそが、GEの目指すオープン・イノベーションの姿であると同時に、オープン・イノベーションに取り組む世界の企業が常に意識すべき課題なのかもしれない。(提供:MUFG Innovation Hub

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