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過熱するICO 仮想通貨バブルに潜むリスク

新たな資金調達手段として、急激に注目を集めているICO(Initial Coin Offering)だが、相次ぐハッキングの被害やシステム的な問題、ギャンブル的な要素の強いインセンティブなど、投資家間の熱狂と共に懸念材料も増えている。

その一方で、リスク防止対策を講じたICOや国家レベルでデジタル化を発展させるためのICOなど、信頼に値するものも存在する。

システムエラーで大型ICOが一時中止に

(写真=Panchenko Vladimir/Shutterstock.com)

2014年2月から2017年7月にかけての累計調達額が16億ドルを突破したICOだが、そのうち14億ドルは2017年以降に調達されたものだ(Coin Deskデータ)。8月17日の最新データでは、18億ドルに届く勢いである。

特に直近数ヵ月の成長力は凄まじく、大型ICOが立て続けに世間の話題をさらった。

その跳躍ぶりを振り返ると、6月、ブロックチェーン・プロジェクト、Bancor protocolが3時間で1億5,000万ドルを調達するというICOの新記録を打ち出した。わずか数週間後、今度はBlock.oneが5日間で1億8,500万ドルを、Tezosが2億3,200万ドルを調達し、記録を塗り替えることになる。

さらには8月に入り、分散ファイルストレージFilecoinが、1時間で2億5,200万ドル(同社のTwitterより)という快挙をTwitterに投稿するものの、短時間で大量の取引が集中したことでシステムにエラーが生じ、ICOを一時中止せざるを得ない状況に陥った。その後、一旦調達金額は1億8,600万ドルと訂正されたが、12日に再びICOを開始し、24日現在2億ドルを突破している。

Filecoinの例は、「目標調達額を設けていなかったため、システムに過剰な負担がかかった」とも指摘されているが、過去の大型ICOでもシステムに同様の問題が生じたことが確認されている。

直近数ヵ月における急激な需要の高まりに、ICOのシステムが追い付けていないことは明らかだ。ICO人気が継続すれば、事態はより深刻になると予想される。速やかな解決策が必須となるはずだ。

DAOのプロジェクトは「有価証券取引法の規制対象」

このようなバブルを彷彿させるICO人気に、最初の懸念を投げかけたのは、DAOのハッキング事件だろう。

2016年5月に当時のICO最高額1,441万ドルの調達に成功したDAOだが、翌月ハッキングの被害に遭い、保有していたイーサリアム360万ETH(約7,000万ドル相当)の資金を流出させた。

この際、ブロックチェーンをハッキング前の状態に戻すという対応策がとられたが、ブロックチェーンを巻き戻すことに反対する勢力はオリジナルチェーンを続行したため、結果的にイーサリアム(ETH)とクラシック(ETC)に分裂した。

捜査に乗り出したSECは2017年7月、DAOトークンが米国有価証券取引法の規制対象となる可能性を示す報告書を発表した。

報告書の中では、焦点となったDAOのプロジェクトが投資や利益配当という点などで、非常にファンドと近い性質であることなどが指摘されている。利益配当を目的としているため、単なる仮想通貨のプレセールとは異なるという見解だろう。

ハッキングの被害に遭ったのはDAOだけではない。SECの報告書が発表される直前、Coin DashがICOで調達した753万ドルが、ハッカーに送金されるという事態も起きている。

このようなICO狙いのハッキングによる資金の流出だけでなく、SECがICOに対する規制の導入検討を示唆したこと、Filecoinの例に代表される取引システムの脆弱性など、懸念の種が明るみに出た。それが進むにつれ、これまで水面下から聞こえていた他の規制当局による懸念が、一気に噴き出す可能性は十分に考えられる。

投資家にとっての「将来的な利益」に疑念

さらに、投資対象としてのICOに対する疑念も根強い。

将来的な利益を確信してICOに巨額を投じる投資家が増えているが、その確信はどこから生まれたものなのか、各ICOのホワイトペーパーで記述されている「将来的な利益」に、どの程度信憑性があるのか――という重要な点に焦点が当たっている。

SECは「投資家を保護する意図」で、1934年証券取引所法に基づき、2016年4月には仮想通貨「Dibcoin」を発行していたSunshine Capitalに、有価証券売買の一時停止命令を出している。

また8月にも「5億3,000万ドルをターゲットにしたマーケット・コラボレーション」という謳い文句でICOを企画していたCIAO Group(現在はNuMelo Technologyに社名変更している)に、同様の対策を講じた。

KYC実施で潜在的リスクを配慮した「OmiseGo」、エストニアの国家ICOなど

しかしこうした一部のICOによる不祥事で、全てのICOを警戒するのは早急かと思われる。重要なのは投資を検討しているICOの真の利益と将来性を見極めることだ。

例えば、6月にICOで2500万ドルを調達した、イーサリアムベースの分散型決済プラットフォーム「OmiseGo」は、リスクを効果的に抑えると同時に特定のユーザーの「買い占め」行為を防止する意図で、KYC(口座開設を行う際の身元確認)を実施している。

最高調達額を「目標達成に必要な額」に設定している点も、信頼が置ける。金額の大きさを追求したばかりにシステムに混乱を生じさせる――といった心配もないだろう。

もう一つポジティブな例として、世界初の国家ICOを検討しているエストニアが挙げられる。公的サービスのデジタル化が進む同国は、2014年から「eレジデント(デジタル住民)プロジェクト」にも着手している。

このプロジェクトは、エストニアの住民に発行しているスマートIDカードを、非エストニア居住者にも発行するという試みだ。大きな利点としては、海外からでもエストニアに納税などが出来るほか、企業設立などもインターネットで手続きするだけで可能になる。

今回、新たにICOを通して独自の仮想通貨「エストコイン」の発行を視野に入れていることを、デジタル住民プロジェクト・マネージャー、カスパー・コージュス氏が明らかにしている。

ICOで調達した資金で、ベンチャーキャピタル(VC)としての国内企業への投資や、AI(人工知能)に代表される最先端の技術への投資を活性化させる計画だ。

それぞれのICOを、より精緻に見極めることが投資家や当局に求められていると言えそうだ。

(提供:MUFG Innovation Hub

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