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ドッドフランク法見直しで銀行がFinTechの脅威に?

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(写真=Thinkstock/GettyImages)

 

新政権によるドッドフランク法見直しの大統領令は、FinTech産業にすでに激震を走らせている。

大手銀行には大歓迎されているこの規制改革だが、「FinTech企業にとってはマイナス作用に働く可能性が高い」と議論されている。中でも打撃は融資、ウェルス・マネージメントを直撃するとの見方が強い。

大手銀行を足かせから解放するドッドフランク法の見直し

金融危機後の2010年に成立した「ドッドフランク・ウォール街改革・消費者保護法」。民主党クリス・ドッド上院議員とバーニー・フランク下院議員が提案した、16編におよぶ包括的金融規制法だ。

大まかな内容は金融安定監督評議会(FSOC)の設置、大手金融機関に対する規制強化、破綻処理計画の策定、デリバティブ取引の透明化、「ボルカー・ルール」と呼ばれる高リスク取引への顧客の預金運用を禁ずる規制などだ。

トランプ大統領は選挙運動中からこの規制が銀行の収益性を低迷させているとし、廃止、あるいは大規模な修正を公約にかかげていた。

大手銀行にとっては「大きな足かせが少なくとも軽減される」と大歓迎をうけているが、これまでその足かせを逆手にとって勢力を伸ばしてきたFinTech企業にとって、痛恨の一撃となる可能性が高い。

「1033条廃止」で顧客金融データが共有できなくなる?

トランプ大統領が合理主義であることを考慮すると完全廃止となる見こみは薄いものの、選挙公約に従い、一部(あるいは大部分)が修正されることはほぼ確定だろう。

FinTech企業にとっての最大の懸念のひとつは、ドッドフランク法1033条に定められている「情報にアクセスするための消費者の権利」――企業にとっては顧客データを共有する権利が廃止される可能性である。

例えば消費者金融会社、Mintなどを子会社に持つ米金融ソフト企業、イントゥイットは提携先であるJPモルガン・チェースから顧客データを入手しているが、1033条が廃止された場合、こうしたパイプラインが絶たれることを意味する。

即時グロス決済企業、Rippleやロボットアドバイザーのパイオニアとして知られBettermentを含むFinTech企業は1月、対抗策として「消費者金融データ権利(CFDR)」を発足。オープンAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)の維持を呼びかけている。

ロボアド企業にしのびよる「資産運用受託規定」の見直し

新政権下では資産運用受託規定の見直しも実施される。現時点でほぼ確定している改正は、年金口座を取り扱うファイナンシャル・アドバイザーに、顧客利益の最優先化や報酬額の水準化を義務づける内容になる。

ロボアドの多くは顧客によるセルフ・プロファイリングを基に、信託投資アドバイスから資産運用、管理などを提供するサービスだ。本来は人間のファイナンシャル・アドバイザーが請け負っていた分野を、テクノロジーの発達にともないAI(人工知能)が引き継いだといったところだ。

現時点では小口投資家を対象にしたサービスが多いが、ドッドフランク法という砦がとり払われた後、なんらかの巨大な変化がロボアド企業を含むウェルス・マネージメント・スタートアップを直撃すると見られている。

Bettermentは昨年12月、ニューヨーク・タイムズ紙などにトランプ大統領宛に向けた広告スタイルの直訴状を掲載。ドッドフランク法が消費者を銀行の貪欲さから保護する目的で導入された点を強調し、「750万人の米年金貯蓄者の味方であることを祈っている」と訴えかけた。

規制から解放された大手銀行が融資FinTechの脅威となる?

融資FinTech企業にも影響はおよぶとの見方が強い。現時点ではドッドフランク法によって融資範囲に規制がかけられている大手銀行だが、「見直しによって再び中小企業に対する融資枠が拡大する可能性が出てくる。

大手銀行から借り入れができない中小企業や個人を顧客層としている融資FinTechにとっては、規制から解放された大手銀行が羽を伸ばしたが最後、その脅威を実感することになりかねない。

トランプ大統領が誰を米国家経済会議(NEC)委員長に指名したかを考えると、事態を楽観視できる材料は少ないという印象を受ける。ゴールドマン・サックスのゲイリー・コーン社長兼CEOが新NEC委員長として、大手銀行とFinTech企業のどちらに有利な環境を創りだすかは想像するに容易い。

FinTech産業が希望をもてる変化としては、1月4日、ウォール街の凄腕弁護士、ジェイ・クレイトン氏がSEC(証券取引委員会)委員長に任命されたことだろうか。クレイトン委員長はテクノロジー関連の法務経験があり、FinTech促進の重要性への理解を示しているといわれている。

FinTech企業にとっては固唾を飲んで変化を見守る時間が、少なくとも当分の間は続きそうだ。「FinTechが銀行の脅威に」といわれているゲームの流れを逆転させる結果にならなければよいのだが。(アレン琴子、英国在住フリーランスライター)

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